りブロ

-りずのブログ、略してりブロ。-
旧記事:映画「愚行録」感想

新春ということで放送されてたのをようやく見ました。
静に集中して見られる環境がなかなか整わず。楽しみにしていたのは本当なんですが。
原作を○○年くらい前に読んで、なんとも言えない読後感だったのをよく覚えてます。
貫井徳郎作品好きなんです。他に「天使の屍」とか「プリズム」とか「空白の叫び」とかも好きで。
あと環さんたちの症候群も好き。殺人症候群はかなりショッキングでしたね…お母さんの最期があんまりにもあんまりで慟哭しましたとも。
この愚行録、登場人物が軒並みろくな奴らじゃないなって思ってたんですが、映像で見ると若干マイルドに感じました。
映像であまり直接的なのはいけなかったのか。あと、私あまり映画見るの上手じゃなくて(この言い方もどうなんだって話なんですが、映像から読み取るより、文章ではっきり書いてくれる方がわかりやすいというか)、細かな違いが感じ取れないのかもしれないけども。
以下ネタバレにつき畳みます。


最初から兄と妹が出てきたのはちょっとだけ驚きました。最初は近所の方の概要からかと思ってたので。あれがないと殺人事件が起こったってことはわかりにくいですしね。
そして話のカギになる兄と妹の関係はどこまではっきりするのかとドキドキしながら見てました。
前半に被害者に近い人のインタビューがあったから最初は「どこが愚行?」という印象になったけども、やっぱり後半でゲスっぷりが出てきました。序盤のイケメン感ある雰囲気が嘘のようだ…(笑)実際こういう人いそうですよね。ここでようやく「愚か」って言葉が出てきました。あの赤ちゃんの父親はやっぱり…。
宮村さんがこの人が殺したんじゃないかって推理、別の人になってました。なにげに原作で唯一犯人に感づいてた人っていうのは結構すごいけどな。
妹のその話はかなり生々しい。ああいう親は何を考えてるのか。お兄ちゃんも妹のことを気にかけてたんだろうけど、子供としては親に食って掛かっても立場が弱いもんなあ。世の中ろくでもない親に罰則ってないしね。
その手のことがあったときも被害者の方が逃げなきゃならなかったり、なぜか被害者の方が責められたりするし。親=正しいっていう前提がもう成り立たないんだから、正当防衛くらい認められてもいいと思う。未成年じゃ賃貸も借りられないんだから。
頑張って大学行っても家柄っていう本人じゃどうしようもできないものが立ちふさがる悲劇ですよ。このへん認めたくないけどリアルだと思います。現実でも有名大学合格者の大半は親の年収が高額っていうのはよく聞く話ですしね。貧しい家に生まれただけでもう不利となると、頑張るのがアホらしくなってきますよ。お金かければ合格できるって説もあるし。…学問ってなんだっけ?
手が這い寄ってくるところのBGMが不気味で生理的に嫌な感じしました。なんともいえない不快感が逆にいい。
映像では犯行シーンないかと思ったんですが普通にあった。正直かなりあっさりだとは思ったけども。
告白のシーンも静かに壊れてる感じがしてぞくっと来たし。ホラーみたいにわかいりやすい怖さじゃなくて、普通の人がプッツンしちゃうとこうなるって感じがして逆にくるものあります。そして知らされる娘の訃報。結局こうなっちゃうのか…やりきれないな。
裕福で良識のある親のところに生まれるのと、貧しくて非常識な親のところに生まれるのじゃ、その時点で大きく差があるもの。犯行は悪いことだけども、それを責めるならまずその不公平を埋めてからにしてほしいわ。子供だって好きで生まれてきたわけじゃないのに。ほんとやりきれない。
その元凶の母親が出てくるのはここだけの展開ですね。
自分の子供二人のことを失敗とか言っちゃうし、今更まともそうなことを言われてもな。前を向いてとか詭弁が過ぎて吐き気がする。要するに、都合の悪いことは忘れたいってことじゃないの。子供のこととか後のことを考えられないなら最初から妊娠するようなことするなよ。
妹の娘は母親にとっては孫にあたるっていうのに無関心だしね。ここでようやく本当の父親のことに触れられ…ここはっきり言ってなかったと思うんですが、原作だとはっきり言っちゃってますよね。さすがに映画じゃまずかったのか。
きっぱり話が終わりって形にならないのがこの話の魅力だと思ってます。後引くほろ苦い結末とか好きなもので。
タイトルの愚行って言葉だけども、個人的には兄妹の母親が一番だと思いますよ。彼女があんな人でなければよかったのに。子供は親を選べないんだし。
畳む


普通にすっきりしないし、幸せにもならない、なんともモヤモヤした後味を残す作品なんですが、その後味が好きなのでやっぱり見ていて楽しい…とは違うけども満足でした。
あれです、のどに魚の小骨が引っかかる的な。そういう何とも言えない心地になるのについつい引き込まれてしまう作品でした。

#お引っ越し記事 #映画感想 #愚行録