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● レンアイオムニバスーSideB --- 7、そこで口篭らないでください ●


 ――ちょい、嬉しいんだけど、困る話を聴いてくんねぇ?

 オレ、伊達ハヤマサ! 自分で言うのもなんだけど、実際そうだし、他に言いようがないからこういうけど、『超モテ男』! 学校中の女子が俺に惚れて惚れて惚れまくっちゃって! 逆に困る! そんくらいモテるわけだよ? ……羨ましいだろ? だって、オレ、イケメンだし! 毎朝鏡見て、自分自身の整った顔立ちに思わず見惚れるくらいだ! そんくらいイケメン! しかも女子の好きなムキムキに鍛えた、脂肪一つない筋肉! よく女子が言うじゃん? 『男子の筋肉ってイイよねー!』とかさ? あれって男でいうところの、『あの女、イイ身体してんよな、特に尻とか好み―!』ってとこじゃね? お互い割り切ってれば、ウザい親の言うところの『ふしだら』って関係も、今時は普通じゃね? 別に迷惑かけてねーんだし、本人たちさえ良ければそれでよくね? 少なくともオレはそういうタイプ。一人一人とあまり深入りしないで、『広く浅く』がオレの理想! ぶっちゃけ、ヤラせてくれりゃ別に良いじゃん? そう思わねぇ?


 これがオレの考えなワケよ。別におかしなことは言ってねぇよな? こっからが困った話なんだ、いや、マジで。


『好きです。付き合ってください! ……っていうか、あたしと付き合いなさいよ!』


 ……天下の『イケメン様』のこのオレに、こんな言いぐさ、なくね? 即フるところなんだが、困ったんだ。いや、マジで。なにせこの女のフルネームは『深沢佳保里』。……知る人ぞ知る、なんて『カワイイ』言葉じゃすまないほど有名な、ある『センパイ』の妹なんだな、これが。
 そのあるセンパイの名は『深沢志桜里』。学校中にその称号? を轟かす、『ドS』女なんだよ。……どこに惚れたんだか知らねぇけど、冴えない『センパイと付き合いだしたとか聞いたんだが、絶対長くは続かねーよ! だってMな奴じゃねーとSと釣り合うわけがねぇし。しかもよりにもよってその深沢志桜里は妹、つまり『佳保里』にはベタ甘の『シスコン』ってウワサ。……な、イケメンも困るわけだよ。それにそもそもオレは女の告白は断らない主義だし。え? なんでって? そりゃ、すこしでもヤラせてくれる機会がある女はキープだろ? 決まってんじゃん? 何を今更当たり前のこと訊くんだよ?

「それで、返事は?」
「あぁ、えっと……」

 こころなしか深沢(妹)の顔がSっぽいのは気のせいか? 性癖、つまり『S』って遺伝すんのか? 深沢(姉)と表情が似すぎるんだが……。

「そこで口籠らないでください!」
「はっ、はい!」

 一体どう返したものか。ここまで断らずに来たんだし、このままってのもありか? 強気な女ほど泣かせてみたくなるもんだし。オレ的には。

「……アンタって、ホンット、『イケメン』とは程遠いわね! 死ねばいいのに!」
「はぁ?」

 おい、今この女、何っつった?

「みんなが『イケメンイケメン』うるさいから、試しに告白してみたけど、どこがいいの? こんな最低のクズ男」
「はぁぁぁぁ?!」

 このイケメン様に、なんて口利いてんだよ?!

「……アンタみたいな奴ほど結婚試合と思った相手に限って、全く相手にされないからね?」

 ……そう笑顔で笑って、深沢佳保里はオレの前から早足で消えた。どういう意味だ?
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