666文字百物語
30、現代版シンデレラ?
わたしは大人になっても童話が好きだ。特に不幸な目に遭っている女の子が、その逆境にめげずに頑張る姿に強く惹かれる。そして数々の物語のお姫様は、ちゃんとその報い――報酬としての――を受けて、最期には必ず王子様が迎えに来てくれる。そんな話がわたしは好きで、わたしもそんな風になりたい。
数ある童話の中で、もっともわたしが好きなのはシンデレラだ。
誰もが知るストーリーであるけれど、話の筋は簡単で、意地悪な継母と義理の姉にイジメられながらもめげなかったシンデレラは、魔法使いの力を借りて舞踏会に出かける。そこで王子様と踊って、王子様に好かれる。その後日、落としたガラスの靴を手掛かりに王子様が探しに来るという話だ。なんともロマンティックで、素敵な話じゃないか。意地悪な継母と義理の姉が最後に嫉妬の炎を燃やすのも痛快だ。
なぜわたしがシンデレラが好きかと言うと、実際にわたしの家には継母と義理の姉がふたりいるからだ。 それはもう、シンデレラの物語そのままに、意地悪で、性格も悪い。しかもひどい浪費癖があるのだ。優しかった父も、継母の影響を受けて、すっかり意地悪になってしまった。こんなはずじゃなかったのに。
だからわたしは、継母と義理の姉を殺すことにした。
そうすればきっと、優しかったお父さんが戻ってきてくれると信じて。
首を絞めてやると、いとも簡単に息絶えた。釣りに使うテグスで一気に首を締めあげたら、だらしなく失禁して死んでいった。それはもう、いっそおかしいくらいに。
わたしは満足だった。これで意地悪をされることもない――
「ホシの手掛かりはテグスの購入場所か。それさえ絞り込めれば簡単なんだけどな」
「今時、釣りのテグスなんて簡単にみんな買っていきますからね。これで買ったのが女なら見当もつくのに」
捜査本部では事件の凶器とみられるテグスの購入者の絞り込みに難儀していた。まるでシンデレラを探す王子のように。
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