666文字百物語
14、ドリームクラッシャーな妹
深夜、俺はリビングにある親のパソコンでエロゲをプレイしている。バイト代は主にこの趣味に費やしている。いいじゃないか、これくらい。親の教育方針が厳しいせいで、俺は子供の頃から男子校だったし、妹だってずっと女子校だし。生活に潤いがないんだよ。
男子校というものは、ロマンがない。女教師はいないし、女子との交流は文化祭くらいだ。それでもわざわざむさいところに来る女子なんてのは、イケメン狙いの女ばかり。せめてもの慰めにデブの胸を揉んだり、互いにグラビアをおススメしあうくらいだ。な、潤いなんて皆無だろ?
今日のゲームは借り物で、主人公が女装して女子校生活をおくるという内容らしい。女子校という響きだけでゾクゾクする。
ちょうどいいところで、妹が起きてきた。どうやら喉が渇いたらしい。いつもならスルーするのに、今日に限ってパソコンの画面をのぞき込んでくる。そんなに凝視すんな。
「……あのさ、兄貴? 言っとくけどこんなことは現実じゃまずありえないからね?」
「なんでだよ。つーか見んなよ」
「着替えにトイレ、体臭。女子ばかりの中で男がいたら、そんだけ目立つの。それにさ、どんなに女顔の男だって、男なわけでしょ? 女子校ってのは女同士のスキンシップもあるし、骨格でバレるよ」
「なんでそんな、夢をぶち壊すようなこと言うんだよ?」
すると妹は笑った。
「前にもね、女装してうちの学校に来た男がいたの。運動部の生徒総出でボコったわ」
それは本当なのか? それともだらしない俺への戒めをこめたブラックユーモアなのか?
……とりあえず、このエロゲはもうやめよう。急にグラフィックの美少女の笑みが怖くなってきたしな。
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