666文字百物語

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  4、なんでも叶えてくれるなら_ある少年の場合   

 やぁ! 僕は神様の使いだよ! 神様って言い方が気に食わないなら、仏さまの使いと呼んでくれてもいいよ。まぁ、よろしく。
 そんな僕が何の用もなしに地上に降りてくるわけないでしょ? 用事はね、君の願いをなんでも一つだけ叶えてあげるということ。神様のご命令ってわけだ。
 ただし、リスクはあるよ。必ず煉獄、もしくは地獄に落ちるということ。その覚悟が出来て、願い事があるのなら言ってごらん? なんでも叶えてあげるから。


僕はその自称・神の使いとやらをじっと見つめた。頭の上のわっかもなければ翼もない。本当に、こんなのが? ……でも地獄行きくらい別にいい。ちょうど僕には願い事があった。
「じゃあ、僕を虐める奴らを全員殺す、ってできる?」
「できるできる、楽勝だよ! ……でもさ、君は本当にそれでいいのかい? 後悔しても遅いよ?」
 僕は学校でイジメを受けて、こうして不登校になった。僕に嫌がらせをした奴ら、見てみぬふりをした奴ら、我関せずを貫いた教師、みんな死んじゃえばいいんだ。
「いいよ。だってなんでも叶えてくれるんでしょ? そのくらいできるよね?」
 僕が挑発的に言うと、相手は背筋が凍るほど綺麗な笑みを見せた。
「はい、もうみんな死んでるよ」
「本当に?」
「本当さ。部屋から出てごらん」
 言われた通りに部屋から出ると、いつも僕に学校に行きなさいとうるさい母親が、食事の載ったトレイを持ったまま絶命していた。
「どういうことだ!?」
「だって、君の母親だって、ある意味では虐めてたわけでしょ? ほら、君の望み通りじゃないか」
 違う! 僕はこんなこと望んじゃいなかった! まさか母さんが――
「ちゃんと願いは叶えたからね。代償は死んでのお楽しみだ」
 神の使いはますます笑みを深めた。
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