666文字百物語
97、彼と彼女らの青春の過ごし方 Pixivでは「371」
ダンベル、終わり。腕立て伏せ、終わり。
俺は毎日決めてある特訓メニューを終えて、自分の引き締まった肉体に満足する。うん、今日も完璧だ。無駄なぜい肉がまったくない鋼の肉体は俺の何よりもの自慢だ。作家の三島由紀夫だって、家で文筆作業をしていたというのに腹筋は見事なものだというし、きっとトレーニングをこなしていたんだろう。彼の男の肉体に惹かれる気持ちはよくわかる。俺もそうだから。
いっそのこと、男子校に通えばよかったと思うのは、一切興味のない、肉感的な女子に告白される時だ。胸が大きい? そんなのは脂肪の塊なだけだろ? 俺が興味があるのは、引かれるのはまっ平らな、鍛え上げられた筋肉の肉体美のみだ。共学はこれだからめんどくさい。でも男友達(しかいないけど)に言わせれば、あの柔らかい感じがいいとのことだ。まったくもって理解不能だ。
「だってさ、女子にハグされてみろって。たまんねえぞ?」
「興味ないな」
「かわいい子とデートなんて、いかにも青春! って感じじゃんか?」
「だから興味がない」
「…………」
高校生にもなると、やれ男女交際がどうのこうのとそればっかり。おまえらは発情期のサルかよ。でもひとりだけ、同調してくれる奴がいる。
「女は甘ったれてるからな」
やけに大人っぽいと評判の奴。彼と一緒にいると落ち着くんだ。筋肉が綺麗だし。話も合うし。やや難しいことばかり言うけど。
「その点、男はいいよな。気楽でさ」
俺をいつも同志として扱ってくれる。それが心地よくて、ずっとそばにいたいと思う。
「彼ってさ、男が好きなの?」
「でも顔は悪くないのにね。どっちが攻め?」
「どっちも攻めっぽいよね!」
彼ら二人が一緒にいるところを見ては一部の腐女子たちがネタにしていることは、本人たちは知らない。知らない方がきっと、幸せだ。
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