666文字百物語
94職人は語る Pixivでは「405」
……あ、お客さんですか。すみませんねぇ、散らかってまして。一応これでも片付けたつもりなんですが、私も息子も不精なものでして。せっかくきれいにしてもすぐ散らかしてしまうんですよ。困った癖です。どうも男所帯だとこうなってしまうんですよ。……え? 貴方のうちでもですか? やはりどこも似たり寄ったりですな。そんなところに突っ立ってないで、お座りになったらいかがですか? 生憎と上手いと言えるような菓子はありませんがね。お茶くらいなら出せますよ。出がらしですみませんがね。
ええっと、ところでうちに何の御用でしょう? ご存知の通り、我が家は代々処刑人を務めてきましたけど、いつも腕がいいと褒められていたんですよ。最近はギロチンでの処刑が主流ですからね。我々の仕事もなくなったとでも思いましたか? それがですね、違うんですよ。ちゃんと髪も適当な場所で切っておかないと引っかかるし、上手く首が飛ばないんですよ。これが庶民の処刑なら簡単な話ですが、高貴な身分の方の処刑となると事ですからね。いや、処刑される時点で高貴もなにもないですが。でも庶民はみんな処刑を楽しみにしているでしょう? だからたまにはわざと失敗することもありますね。民衆は血を望んでいるんです。切断された首から滴る血液に興奮する輩も多いんです。……まぁ私もそれが好きでこの仕事をしているわけですが。
それで、私の話を聞いて気が済みましたか? 自分を処刑した人間に感想を訊くって、一体どんな気分です? 今度は貴方が話す番ではないでしょうか? ……でも首だけでは喋れませんよね。失礼しました。
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