666文字百物語

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  90、飛んで Pixivでは「374」  

 高いところって、好き。
 車でスピードを出すのも、大好き。
 暗いところや狭いところも、大大大好き。
 要は、あたしは怖いモノなしというやつなのだ。この世で怖いものなんて何もない。あたしは組長の正妻の子。度胸が据わってるってよく言われるけど、そうじゃなきゃやってられないもの。ケンカは度胸とタンカの切り方。男相手だろうが、あたしはケンカで負けたことがない。
 そんなあたしは、当然のように学校ではつまはじき者。教師ですら扱いに困っているらしい。……別にいいよ、あたしだってあんたらに期待してるわけじゃないし。
 でも、風紀委員長の男子は結構好みなんだ。イケメンで、スポーツ万能で。勉強はどうだか知らないけど。その彼に告ったら、こんなことを言われたんだ。
「俺さ、度胸のある女の子が好きなんだよね。バンジージャンプとかも顔色一つ変えないような子。君ってそういうの平気そうじゃん?」
 あたしが組長の娘だってことは、公然の秘密だった。だから彼が知っていてもおかしくはない。なんだ、そんなことで付き合ってくれるの? 簡単!
「じゃあ、放課後に。屋上に来て。準備しとくから」
 学校の屋上って、低すぎやしないか? でもいっか。それはそれで楽しいかもだし。


「じゃ、飛んでみせてよ」
 あたしはロープを身体に巻き付けて、屋上のフェンスから飛び降りた。……あれ? ロープに切り込みが入ってる? どういうこと?
 しかし考える暇もなく、あたしの身体は落下していく。気に入らない、例の教師が見えた。
「よくやってくれたわね。あの子ったら、問題ばかり起こすから困ってたの。殺してくれてありがとう」
 言いながらその女教師は、いやらしい腕を彼のものに絡めた。彼もまんざらではなさそうに微笑む。
「あんな奴、好きでも何でもないですよ。それより、内申の方、よろしくお願いします」
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