666文字百物語
83、モテる男の受難 Pixivでは「445」
「好きです。付き合ってください!」
周囲からは、「うらやましー!」だの「モテモテじゃんか」なんて、男子の声がする。いったい何が羨ましいものか。
「ごめん。俺は好きな女子がいるから」
嘘、ただの言い訳、ただの方便だ。相手の女子は目に涙をたっぷり溜めて走り去っていく。……なんだよ、まるで俺が悪いことでもしたようなものじゃないか。ぼんやりと突っ立っていると、悪友がひょっこり顔を出した。
「モテる男も辛いよなぁ。しかし、齢十五にして十五人に告白されて、全員ふるとは。おまえどんだけ理想が高いんだよ?」
こいつは俺には本命がいないということも知っている。前に話していてカマをかけられ、うっかりひっかかってしまったんだ。俺としたことが。
「そりゃあ、大事な学生生活の色どりみたいなもんだし。かわいくて、俺を立ててくれるような子がいいな。あと何か特技があればなおいいし、お嬢様も憧れるし……」
「あのなぁ、そんな女子なんざ二次元だけだろ? いくらおまえがモテるからって調子に乗り過ぎ」
別にいいじゃないか。向こうが勝手に惚れたんだし。俺が惚れたわけでもなし。
そんなある日、学校では滅多に見かけないようなかわいい子が俺に告白してきた。見るからに他の女子と違う、お嬢様のような立ち居振る舞いが気に入った。
「いいよ、付き合おうか」
彼女は予想通りの箱入りのお嬢様のようで、肌の色も誰よりも白かった。彼女曰く、箱入りとして育てられたらしい。でも、なぜそんな話をするのだろうか。
「貴方なら、わたしの夫に相応しいと思ったの。お父様もきっと納得するわ。さ、すぐに結納を――」
結納って……? 冗談じゃない。俺はもっと、青春を謳歌するんだ。そこに悪友が姿を見せた。
「どうだ? ご希望のお嬢様だ。お嬢様のデータを集めるのに苦労したんだぞ?」
なんのことか理解しがたかったが、たしかこいつはパソコン部所属だっけ。でも、たかがパソコンで何が出来るんだ? せいぜいソフトくらいだろ?
「ねぇ、結納――」
俺には何が何やらわからずに、目の前にノイズがかかった。
「モテる男ってだいたいパターンが読めますね。こいつも例外じゃなくてつまらないですねぇ」
「ま、いいじゃないか。他にもモテる男はいるだろ? そいつをサンプルにすればいいさ」
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