666文字百物語
81、ヤンキーの誓い Pixivでは「345」
俺たちは、世間のつまはじきモノだ。頭にヤ行がつくわけじゃない。けど、まったくのいい子というわけでもない。不良、ヤンキーと呼ばれる人種だ。……もう古い? 絶滅危惧種? うるせーよ!
けどな、そんな俺らだって、ルールってもんはある。けじめだ。弱い者いじめはカッコ悪いからやらない。女を殴るなんて論外だ。それ以上ダサいことはない。
……はずだったんだよ、これがさ。
俺の親友が、酔った勢いとはいえ、女を殴っちまった。俺もあいつも、チームではかなり上の方にいる。これはけじめをつけなければならない。それがヤンキーの掟だ。
「○○、おまえそいつと仲良かったよな? 二度とふざけた真似が出来ないように、腕潰しとけ」
タバコを加えた上の連中に言われてしまえば、俺にも逃げ道はない。許せ、と思いつつ、俺はダチを殴った。初めての経験だ。
それからしばらくして、俺が負わせたダチの怪我もすっかり良くなった。
「あんときは思いっきりやってくれたな!」
そんなことを言って笑い合う。そういえば、例の殴ったって女がいないな。
「おまえさ、女は? けっこうひどい怪我だったって聞いたけど?」
「あぁ、先輩がさ始末してくれたよ。……余計な仕事を増やしやがってって怒ってたな。だからおまえに俺を殴らせたんだろ」
俺にはうっすらと、こいつの背後に長い髪の女が薄笑いを浮かべているのを見た。その女は元の顔立ちがわからないくらいにボコボコに殴られていた。
……その数日後、そいつはバイクの事故で死んだ。俺が絶対に女を殴らないと誓ったのはその時からだ。
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