666文字百物語

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  80、ハッピーバースディ&ハッピーダイ 女子サイド Pixivでは「263」  

 『愛してる』って最近言ってくれないのはなぜ? もう飽きた? 嫌いになった? すべてが嫌になった? それとも……他に女がいるの?
 気になって、問い詰めてみても、返ってくる返事は否定の言葉。
「そんなわけないじゃん?」
 『じゃん』なんて軽い調子で言われて、不安は大きくなっていく。本当に? 本当に飽きたわけでも、嫌いになったわけでも、他に好きな人がいるわけでもないの?
「しつこい!」
 半ばキレ気味に言われてしまえば、健気な女として知られてるあたしとしては「ごめんね」と言うしかない。もうすぐ彼と出会って数ヶ月の記念日、兼、彼の誕生日だ。


 彼と出会ったきっかけは、よくある話だけど、イジメられてる彼をあたしが助けたこと。学校の外ではそれなりに派手にしてるあたしは、その分のポイントを他で稼がなきゃいけないから、学校ではいい子ちゃんしてる。だから学級委員にも推薦されるし、他の重要な役職も任される。それなりに目立つから、それなりにモテる。
 それなのに、なぜこんな地味な男子と付き合うようになったのかは自分でもよくわからない。というか、よく覚えていない。たしか、彼の方からびくびくしながら告ってきたんだ。
「貴女が好きです」なんて、何の捻りもないのが逆に新鮮で、からかったら面白うそうだから付き合うことにしたんだった。今思い出した。
 ……でもね、最近はすっかり飽き気味なの。
 愛の言葉も、あたしを湛える言葉も、なにもないの。
 そんなつまらない男と付き合う義理はないわよね?  だからあたし、誕生日ケーキを焼いて、中に毒を仕込んだの。ほら、どこの国かは忘れたけど、中に当たり代わりの指輪を入れたケーキがあるじゃない。そんな感じ。
「ぐあぁぁぁぁ」
 彼は喉を掻きむしりながら、でもそれほど苦しまずに死んだらしい。
 ハッピーバースディ&ハッピーダイ、ダーリン?
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