666文字百物語

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  79、ハッピーバースディ&ハッピーダイ 男子サイド PIxivでは「262」  

 『愛してる』って最近言ってくれないのはなぜ? もう飽きた? 嫌いになった? すべてが嫌になった? それとも……他に男がいるの?
 気になって、問い詰めてみても、返ってくる返事は否定の言葉。
「そんなわけないじゃん?」
 『じゃん』なんて軽い調子で言われて、不安は大きくなっていく。本当に? 本当に飽きたわけでも、嫌いになったわけでも、他に好きな人がいるわけでもないの?


 僕と彼女が付き合い始めたきっかけは、ほんの些細なこと。
 イジめられていた彼女を僕が助けてあげたから。ただそれがきっかけで、彼女は僕に惚れたらしく、告白してきた。
 僕だって今まで付き合ったことがなかったわけじゃない。数人とは付き合ったことはある。
 そういえばもうすぐ彼女の誕生日だ。モテる男はそういうイベントを逃しちゃいけない。なにか気の利いたプレゼントを用意して、レストランに予約を入れて。
 そうこうしてる間に彼女の誕生日。ちゃんと演出しなきゃ。
「目をつぶってて」
 僕がそういうと、彼女は素直に目を閉じた。こうしているとかわいいんだけどな。僕は持ってきた注射針を店員や他の客から見えない位置で刺した。中身はネットの通販で買った毒物だ。苦痛なく死ぬことができるというもの。
 やがて彼女の手がだらしなく垂れた。もう死んだかな? 誕生日プレゼントは、僕のそばにずっといさせてあげるということだ。きっと彼女も本望だろう。
 すでに息絶えた彼女は、だらしなく筋肉が弛緩していたが、それすらも綺麗だと思った。
 ハッピーバースデイ、そしてハッピーダイ。
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