666文字百物語
74、ラプンツエルって実際はこうなるんじゃないか? Pixivでは「281」
あるところに髪の長い女の子が塔に幽閉されていました。彼女の名前はツエル。ツエルとは野ぢしゃという野菜のことです。なんでも彼女を塔に閉じ込めた育ての親が名付けたそうです。本当のツエルのお母さんがツエルを妊娠中に、どうしても野ぢしゃが食べたくなり、娘が生まれたら渡すという条件で野ぢしゃを分けてくれたのです。
お母さんは祈りました。
――どうか、この子が女の子ではありませんように。
しかし、この手の願いは通じないもので、生まれたのは珠のように愛らしい女の子でした。
両親は泣く泣く子供を手放しました。どんなに理不尽なものであっても、約束は約束です。
こうしてツエルは魔女と呼ばれる育ての親と暮らすようになりました。髪を伸ばすよう指示したのは魔女でした。
「いつかおまえを塔に閉じ込めて、この長い髪を伝って登ってみたいものだ」
「…………」
そう、魔女は呟きます。ツエルは何も言いません。逆らっても無駄だということがわかっているからです。
そしてツエルは塔に閉じ込められました。梯子を魔女が持っていってしまったので、出ることはできません。どうしたものかと思っていると、下から声がしました。
「ツエルや、髪を下ろしておくれ!」
ツエルはその黄金の髪をロープ代わりに下ろしてやりました。魔女はそれをがっしりと掴み、登って――
「しまった! 髪がすべすべすぎて、登れやしない! おまけに梯子も捨てちまったから、おまえを出してやれない!」
「なんですって!?」
……こうしてツエルは、その塔の中に閉じ込められたまま年を取り、魔女も死に、一生ひとりぼっちになるのでした。
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