666文字百物語
72、占いはあくまで参考程度に Pixivでは「274」
今日の占い、いて座は一位。
「よしっ!」
あたしは思わずガッツポーズ。
この番組の占いはよく当たるんだ。彼氏に告白した時も、バスケ部の試合で活躍した時も、テストでヤマ張った時も、ぜーんぶこの番組のアドバイスに従ったおかげ。なんでもこの番組、有名な占い師が監修してるらしい。だからよく当たるんだ。
『今日のいて座のラッキーアイテムは、羽根です』
羽根? 羽根って言ったよ。そんなもの、どうやって手に入れればいいんだろう? ここは東京だし、うちに鶏小屋なんかないし。一気にテンションが下がった。ラッキーアイテムを持ってないと不安とか、あたしもたいがい、この番組に依存してるって言えるんだろうな。でも、わかっててもやめられない。
「どうか、恵まれない子供たちに!」
通学路で都合よく募金をやっていた。そうだ、ここで募金すれば羽根がもらえるじゃん! あたしは小銭を入れて、代わりに羽根を貰う。なんだかんだでツイてる! これで今日は大丈夫。今日はどんないいことがあるのかな?
そんな時だった。
あたしの方に向かって猛スピードで車が突っ込んできたのは。いきなりのことで、覚えているのはそれだけだ。悲鳴を上げる暇なんかない。
「危ないっ!」
募金をしていたお兄さんが、あたしを突き飛ばした。やっぱり助かるんだね。占いを信じて良かった。
「……なんでも、助けようとしたらしいよ」
「でもこうなるんなら逆に助けようとしない方がよかったんじゃないの?」
女子高生の遺体は、タイヤで顔を潰され、ただ口元だけが満足そうな笑みをたたえていた。
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