666文字百物語
68、付喪神の恩返し Pixivでは「250」
昔、子供の頃にばあちゃんから聞いたことがある。
『いいかい? モノには神様が宿っていてね、大切にするとちゃんと行いを見ていてくれるんだよ』
そして実際に『そう』であるのだと、目の前の古いテレビは証明していた。地上デジタル放送に切り替わった現代、我が家のアナログテレビは映らないはずなのに、ちゃんとカラー画面が映っている。
「よ! 俺を大事にしてくれてサンキュ! 礼におまえが見たい番組、もしくはビデオをただで見せてやるよ。しかも高画質で」
「マジで?」
俺は半信半疑のままテレビを見下ろした。テレビはふてぶてしくタバコを吸っている。
「じゃあおまえが借りたがってたAVでも見せてやろうか?」
「昼間っから……いらねえよ」
なんか調子が狂う付喪神だ。ばあちゃん、一応大事にはしてたけど、そんなちゃちな恩返しってあるのか?
「おまえが思ってることを当ててやろうか? こんなちゃちなおんがえしなんてあるのか? だろ?」
すげえ、本物かもしれねえ。俺はさっそく見せてくれると言ったAVを見せてもらうことにした。
「だがその前に――」
「あちっ!」
付喪神はそれまで吸っていたタバコを俺の背中に押し当ててきた。なにするんだ。
「おまえが俺にしてきたこと、ちゃあんと覚えてるぜ。よく俺でタバコの火を消してたよなあ?」
そんなこと……あったな。俺はタバコの高温を押し付けられながら、付喪神ってどうやったら消えてくれるのかを真剣に考えだした。
Copyright (c) 2023 rizu_souya All rights reserved.
-Powered by 小説HTMLの小人さん-