666文字百物語
66、お百度とお礼 Pixivでは「199」
その日はお百度参りするために神社に行ったんだ。あたしはいわゆるヤンキーでさ、世話になった教師を呼び出して、お百度参りするつもりだったんだ。
でも時間になっても教師は来やしない。ただ時間だけが過ぎていく。
そこで出会ったのが、白い着物を着たはだしの女だった。
「あんたなにしてんの?」
「あと三日で満願叶うんだよ。あんたもお百度かい?」
「あぁ。世話になった担任にたぁっぷりお礼しようと思ってさ」
あたしはその時はその女もお百度参りするんだと思ってた。恥ずかしながら、あたしは『お百度参り』と『お礼参り』の区別がついていなかったんだ。女は言う。
「それなら、ちゃんとはだしで階段を昇らなきゃ。そうすることで神様が願いをかなえてくれるんだよ」
「ふぅん。それであんたは何を願ってるんだ? 見たところ困りごともなさそうだけど」
すると女にはにやりと笑って、
「旦那がね、他に女を作ってたんだよ。許せないだろ? だから旦那と相手の女が早く死にますように、って」
「陰険だねぇ」
「あんたもお百度するってことは陰険だろう?」
ここで女が言っているのがお百度参りだとわかった。
「人を呪わば穴二つ。あんたもきっと呪われるよ」
言って女は去って行く。
あたしがバイクで事故を起こしたのは、その翌日だった。
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