666文字百物語
60、命、買います。 Pixivでは「456」
経済新聞を見ていると、世の中は(少なくとも日本は)、だいぶ景気云々に振り回されえているのだと感じる。世間のサラリーマンもご苦労なことだ。経営者に振り回されて、上司にはヘコヘコして、下の奴に対しては偉そうにえばったりして。俺はそんな職業じゃなくてよかったよ、ホントにな。
いくら日本の景気が悪いとか言われても、日本よりも下は沢山いるし、沢山ある。食糧すら自力で生産できない国のくせに、我が国はなんと豊かなことか。百円均一の商品なんかは大抵が海外の低賃金労働者の仕事でなんとかやってる。労働力はあるところにはあるものだ。逆に、ないところにはない。
「大変っすよ! また――」
「みなまで言わなくていい。おまえの言いたいことはわかってるよ。ちゃんと手は打ってあるから大丈夫だ」
そう、その気になれば労働力どころか、命さえ金で買えるのだ。
「ワタシ、ニホンゴ、コレでイイ?」
「十分だ。おまえの仕事は簡単だ。ただこれをもって、あっちにつっこめばいい。ベリーイージー、オーケー?」
「オーケー、オーケー!」
俺はこいつの名を知らないが、こいつの家族はこいつを金で売った。それを俺が買った。
義理人情で生きる時代じゃないんだ。筋者といっても大事な存在くらいはいる。その点、金で買った命は便利だ。
このまま経済格差が埋まらずにいれば、俺たちの生活も安泰だ。おまえの命、安く買ってやるよ。
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