666文字百物語
55、コドモのおにいちゃん Pixivでは「338」
ぼくはまだコドモ。みためもなかみもきっとコドモ。なんにもしらない、わからない、『むく』なコドモ。だからきっと、なにをしてもゆるされる。
「おにいちゃん、ママがね、はやくかえってきないさいって」
あたまにボンボンをつけたいもうとがそんなことをいってくる。なまいきなことに、ぼくよりも『オトナ』なかんじがする。きっとママのしゃべりかたをまねしてるから、そうおもうんだ。ぼくもいもうとも、まだまだ『コドモ』で、『オトナ』じゃない。『コドモ』はけんりというものがないかわりに、なにをしてもいい。
「それはちがうよ、おにいちゃん!」
うるさいな。ぼくよりも『コドモ』のくせに、なまいきなんだよ。ぼくのほうが『オトナ』なんだから、いうことをきけばいいのに。そういうと、かならずいもうとははんげきしてくる。
「おにいちゃんって、コドモだよ」
コドモにコドモあつかいされるなんて、ぼくはゆるせない。だから、いもうとのくびをしめてやる。
「いたいよ、おにいちゃん!」
いもうとがぼくのからだをおした。ぼくのいしきはとおくなって、とおくなって、やがてなにもかんじなくなった。
「この子ったら、いくつになっても子供なんだから。お兄ちゃんがコドモで、困ったものね」
ママは私の頭を撫でた。
お兄ちゃんの身体は死んでからもう何年も経って、ひどい匂いがする。でも、しょうがないよね? 大人の言うことを聞かないで、いつまでもコドモだったのが悪い。私が殺さなきゃ、お兄ちゃんは我が家のお金を玩具につぎ込んでいただろう。そんなバカな話はない。殺しておいて正解だ。
「ママはお兄ちゃんのことが大切だった?」
死体になったお兄ちゃんは、小学生の身体のまま骨になっていた。我儘なお兄ちゃん、救いようのないお兄ちゃん。でも、そんなお兄ちゃんが私は嫌いじゃなかった。だから、独占したかったのかもしれない。
いつまでもコドモの身体をしたお兄ちゃんは、私の好みだ。
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