666文字百物語
51、わたしはヤンデレじゃない Pixivでは「343」
一昔前のアニメの主題歌であったっけ。大好きだから、あなたにわたしを食べて欲しい的な歌詞の曲が。わたしもその気持ち、わかるんだよね。大好きな相手ならいるから。ただし、恋人じゃない。愛しの弟だ。
小さい頃からひとりじゃ何もできなくて、なにをするにもわたしがいなきゃ駄目だった。まるで仔犬のようにわたしのそばから離れなかった、とってもかわいい弟。そんな大事でかわいい弟になら、わたしは食べられてもいい。その逆もいい。
でも高齢の両親が心配で実家で同居しているわたしとは違って、弟は成人すると同時に都内に上京してしまった。両親だけじゃない、あんなにべったりだったわたしも置いて。
……どうして?
どうしてわたしを置いていくの? どうしてわたしを家に呼んではくれないの? どうしてわたしから離れるの? どうして? どうして? どうして? ねぇ、どうして?
わたしたち、あんなに一緒だったのに。わたしたち、あんなに仲良しだったじゃない。まさか女? 彼女が出来たから、わたしから離れるというの? そんなの許さない。
弟に電話する。いつもは留守番電話に繋がるのに、今回は一発で出た。
「兄貴? ……あのさぁ、いい加減に弟離れしてくれよ。俺だっていつまでもガキじゃないんだから。それに、兄貴みたいなの世間じゃなんて言うか知ってる? ヤンデレっつーんだよ」
ヤンデレ? 病んでるってこと? わたしは違う、病んでなんかいない。だって、わたしは弟のことが大好きなだけ、心配なだけなんだから。
弟に余計なことを吹き込んだであろう相手は誰だろう? ……タダじゃ済ませない。
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