666文字百物語
40、○○デビュー 女子編
わたしもさ、校則を守ってるのは別に、真面目だからじゃない。ただ風紀委員として示しがつかないから。ただそれだけのことだ。
本音を言えば、わたしだって下着が見えそうなくらいにスカートを短くしてみたいという願望はある。男子って結局、そういう女子が好きなんでしょ? 今のわたしみたいに、地味なのはタイプじゃないんでしょ? 性格なんか見てなくて、結局はスタイルが大事なんでしょ? ……わかってるんだよね、そんなこと。
わたしは今、高校三年生で、風紀委員長だ。誰も好きでこんな役職についてるわけじゃない。三年連続でいらんことしいのクラスメイトがわたしにばっかり票を入れるから、だから嫌々風紀委員を引き受けてる。なにが悲しくて、高校生にもなってこんな委員会? 別にわたし、真面目じゃないよ? そうだ、自分から校則違反をすればいいんじゃない。
それからわたしは、徹底的に校則を破った。
あれだけ熱心に守っていたスカート丈も短くしたし、髪も染めた。授業中もうるさくして、『真面目じゃないですよ」アピール。これでわたしは風紀委員を首だろう。なんて気分がいいんだろう。
そんな生活を続けているうちに、わたしはいつしか不良と呼ばれるようになっていた。番長だってさ。笑えるじゃん? 母親も私の変わりように驚いてる。いい気味だ。子供の頃から厳しかったから、私はあんな不自由な想いをしてきたんだ。ざまあみろ!
「○○ちゃんはそんな子じゃないわ」
でもね、母が包丁を持って私に迫ってきた時、恐ろしいものを感じた。
「私にはあなたをいい子に育てる責任があるのよ。悪い子のあなたなんか、いらないわ」
何を言ってるの? 私は、私は、ただ、地味な自分が嫌だっただけで――それを嫌だと思っちゃいけないの? しかし母の歩みは止まらなくて、私は身体が硬直して逃げられなかった。
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