666文字百物語

モドル | ススム | モクジ

  36、わたしがいちばん!  

 わたしはずっといちばんだったの。パパもママも、わたしがいちばんすきだって、だれよりもすきだって、そういってたの。
 それなのに、いもうとがうまれてから、わたしの「いちばん」はあっさりいもうとにとられちゃったの。
「今日からあなたはお姉ちゃんなんだから」
 ママはそういうけれど、わたしはおねえちゃんになんかなりたくなかった。
「よかったなあ、可愛い妹だぞ?」
   パパもそういうけれど、まいにちわたしにしてくれたキスは、いもうとだけのものになった。
 まだわたしのようないろじゃない、あかいかおのみにくいもの。それがわたしのいもうと。
 だれがなんていっても、わたしはいちばんがいい。
 いちばんかわいくて、いちばんだいじだっていわれたいの。
 だから――

「しっかりしてよ! ねぇ、ねぇってばぁ!」
 ママがあわててる。わたしはもっていたこどもようのはさみをすてた。これでいちばんはまた、わたしのもの、わたしだけのもの。
 そうおもうと、とってもきぶんがよかった。
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