666文字百物語
149、傷つけることしかできない Pixivでは「470」
大好きなんです、お慕い申し上げているのです。貴方様のためならば、どんなことでも出来るのです。
わたくしが愛する殿方は、とても心優しい方なのです。
電車で席を譲るのは当たり前。重い荷物を抱えているご老人を見れば、手を貸さずにはいられないし、遅刻しそうになっても、迷子がいれば放っては置けないのです。彼のそんなところが大好きで、わたくしも微力ながらも力になりたいと思うのです。
そんな願いを神様が聞き届けてくださったのか、わたくしも簡単な『超能力』とでも呼ばれるような力を手にしました。時間の流れを止めたり、思いものを軽くする能力、その他諸々です。
でも、必ずしも力を持つことと幸せとはイコールではないのです。
「……君もね、助けようとしてくれる気持ちは嬉しい。ありがたいって思ってるよ? でも、愛情も尽くされると重いんだよね」
「はい」
わたくしが得た力は、かの方を幸せにするどころか、むしろ逆でした。
元は恋人に裏切られた地縛霊であるわたくしに力が与えられたところで、それはいわばマイナス方面にしか働かないのです。その結果、いつも大好きなこの方を傷つけてばかりなのです。わたくしの得た力は、傷つけることしかできないのです。
「悪いことは言わないからさ、君もいい加減に、成仏したらどう?」
想いを寄せる相手にこんなことを言われてしまう。この悲しみが、あなたにわかりますか?
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