666文字百物語

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  147、子供は時に無邪気で、トキに残酷 Pixivでは「457」  

 お寿司のネタの中で、ぼくが一番好きなのは、やっぱりイクラだ。
 イクラならいくらでも食べられる。大好物だから。両親にお寿司屋さんに連れて行ってもらうと、いつもイクラばかり食べる。だって、他に好きなものがないんだもん。
「なんでそんなにイクラが好きなの?」
 ママがそう訊いてきた。いつも通りの優しい笑顔で。
「だって、イクラって魚の卵なんでしょ? なんの魚かは知らないけどさ。卵ってことは、中にいろいろと入ってるんでしょ? 魚の内臓とか、うきぶくろとか」
 理科の解剖でブナをばらした時に、ぼくはたしかに見たんだ。魚の中身って、人間と同じように内臓が詰まってた。もちろん人間の内臓なんて見たことがないけどさ。そのミニチュア版っていうか。
「…………」
 ママが黙っちゃったから、ぼくはまたしゃべる。
「そういうの、見るの好きなんだ。ぼくね、大きくなったらお医者さんになろうかなって思ってるんだ。そうすれば、今度は人間の内臓が見れるでしょ? そうだよな?」
 別に動いている人間の内臓を見る機会なんてない。だから、ぼくはお医者さんになるんだ。……掛け算は苦手だけど。
「…………」
 黙ったまま、ママは遠い顔をした。まるでなにか悩んでいるように。ぼくの言ったことって、そんなにおかしかったのかな? 別にヘンなことは言ってないよね? ね?
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