666文字百物語

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  146、独占欲=愛情? Pixivでは「460」  

 彼ってばね、わたしのことが好きすぎるのよ。だからきっと、自分だけのものにしておきたいって思うんだわ。じゃなきゃ、こんな真似するわけないもの。
「おまえが俺以外に笑いかけてるとイライラする」
「俺以外の男と話すな」
「おまえは死ぬまで俺のものだ」
「俺から離れるな」
「ずっとそばにいろ」
 ……ね? これってさ、彼がわたしに執着してる証拠でしょ? わたしが大好きで、愛してるって証拠でしょ? だからわたしは甘んじて閉じ込められてるの。彼が借りてる部屋に、ずっとわたしは棲みこんでる。玄関のカギは空いてるんだけど、あれだけ愛されてるのに、わたしが出て行ったらまた機嫌が悪くなる。怒ったところも好きなんだけど、もっといえばずべてがわたしの好みで、たまらないんだけど、彼は怒っている時が一番素敵なの。輝いてるの。だからわたしがその邪魔なんてしちゃダメじゃない? だからずっとここで待ってるの。
 ガチャリと音がして、彼が帰ってきたのだと知った。わたしは用意しておいたお味噌汁をよそう。でも彼は味にはうるさいし、細かいことでもイライラするから、いつも通り殴られる。そのたびにわたしにはあざが増えていく。でも、これはわたしが愛されてるって証拠だから。増えるたびに嬉しくなるの。
 でも、今日のはちょっと痛かったな。……あれ? なんか意識が遠のいていく。ちょっと、まずいかも……


「それで? 新しい彼女ってその子?」
 俺は悪友の隣で笑う、大人しそうな女に眼をやる。またこのパターンだ。
 こいつはいつも、自分より遥かに弱い女にしか興味がない。自分のサディッスティックな欲望を満たすための道具としか見ていないんだ。
「前の子は?」
 黙ってしまった。さては、また同じパターンか。こんなとこにつかまる女って、本当に理解不能だ。
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