666文字百物語
134、口にしてはならない Pixivでは「421」
若い娘の血を求め、その女性は高価な報酬を餌に召使たちに命じる。若ければ若いほどいい、処女ならばもっといい。幼な過ぎるのは血液の量が少なすぎる。
……そんな難しい条件のせいで、従者たちは若い娘を見つけるのが困難だった。女主人は美しく、冷たい美貌の持ち主だ。その自信の源を死守するために、今の彼女は必死なのだ。見ているこちらが痛いくらい。
「侍女たちの話によると、また新しいのを作ったらしいぜ?」
「またかよ……。いくら自分が若くない、年増だからってさ。ご主人様の目的って実は、自分より若い女を皆殺しにすることじゃね?」
娘を探しに村に降りた男たちは口さがない。ここならばいくら話しても聞かれる心配はない。
「頼まれて作る方もどうかって思うぞ。たしかに年増だけど美人だし、人妻の色気もあるけど、結局はそれだけだしな。金もあるけど、それも夫のものだし。あの年齢で自分の見た目にしか興味がないってのも相当だよな。俺は給金に惹かれてきたんだけど、おまえは?」
「俺は……そうだな、攫ってきた女の中に好みの娘がいるかもってだけで」
そんなことを話しながらも、どうにかその日も若い娘を三人連れて城に戻った。
城の中には、新たな拷問器具が用意されていた。
「鉄の処女――アイアンメイデンと名付けたわ。どう? いい名前でしょ?」
女主人は得意げに言う。男はもううんざりである。しかし、態度に出すわけにはいかない。
と、そこで先ほど一緒に歩いていたもう一人が女主人に耳打ちする。
「……ちゃんと血が手に入るか確認したいわ。おまえ、入りなさい」
「え? 俺ですか?」
「あんたはこのわたくしを年増と言ったらしいわね? そんな余計なことを言う口ならいらないわね」
いつの時代も女性にとっての禁句は存在する。俗に地雷と呼ばれるその言葉を口にしてはならない。
Copyright (c) 2023 rizu_souya All rights reserved.
-Powered by 小説HTMLの小人さん-