666文字百物語
133、余計な言葉 Pixivでは「333」
まったく、泣けば許されるとでも思ってるのかしら?
あたしは息子のテストの点数のひどさに、文字通り頭を抱える。どうしたらこんな点数が取れるのかしら? 小学一年生の時点でこれじゃ、先が思いやられるわ。ホントに、誰に似たのかしら?
「ごめんなさい」
「謝ればいいというものじゃないの。ちゃんと結果を出しなさい。まったくもう、口答えだけはするんだから!」
これも夫が買い与えたゲームのやり過ぎのせいかしら? 成績はどんどん落ちていって、このままじゃ、この子の招来はどうなるのかしら?
「あんたね、ゲームはやるなとは言ってないのよ? ちゃんとテストでいい点が取れれば、ママだって文句を言わないの」
「……はい」
ママに起こられて、僕はしょんぼりして部屋に戻った。この家の子供なんて、もう嫌だ。パパのようなお医者さんになりなさいって、ママはそればっかり。もういやんなっちゃうよ。
『いいものを見せてあげようか?』
突然誰かの声がした。なつかしいような声。
「誰?」
『これを見てごらん? ママが子供の頃のテストだよ』
そこに書かれていたのは、僕よりもひどい点数。ママの名前がママの字で書いてある。いったいこんなもの、どうしたんだろう?
『蛙の子は蛙なんだからね、ママも余計な期待しなきゃいいのに。あんたもきっとろくな大人にならないよ。保証する』
なんでそこまで言うんだろう? この人に一体なにがわかるんだろう?
『そりゃわかるよ。だって僕は君自身、君が大人になったのが僕なんだから』
声と同時にお酒とたばこの匂いのする息をその人は吐いた。そうか、僕はどうせそんな大人になるんだ。じゃあ頑張っても意味ないね。
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