666文字百物語

モドル | ススム | モクジ

  131、同情するなら Pixivでは「373」  

「……やだわ、あの子。また来たのね」
「ごみを漁ってるわよ。散らかるじゃない。ホント、やんなっちゃうわよね」
「でも、なんだか可哀想じゃない? まだあんなに小さいのに……」
 うるさいな。僕はこうするしか生きていく術を知らないんだよ。人さまから見ればごみだろうが、僕にとっては立派な食事だ。それを馬鹿にするなよ。
「それに、カラスがこないからいいんじゃないの? あの子が追っ払ってくれてるのよ、きっと」
「またそんな、甘いこと言っちゃって! くせにしたらどうするのよ? 責任とれるの?」
 要は、きれいごとばっかり言ってないで、ちゃんと責任というやつを取れと言いたいらしい。同感だ。同情するのなら、本当に可哀想だと思うなら、ちゃんと行動で示してほしいものだ。同情だけで飯は食えない。たった一人の家族だったおばあちゃんを亡くした僕が学んだことだ。おばあちゃんさえ生きていれば、おいしいご飯を今でも一緒に食べていたのに。
「そういえばあの子の飼い主って、もう亡くなったんだっけ。やだわ、最期が近いんなら、ちゃんと飼い主を捜しておいてもらわないと」
「マンションじゃ、飼い主なんて見つからないでしょ。あーあ、カワイソ―」
 仔猫だって、そうやすやすとプライドは売れない。僕はちっぽけな仔猫だけど、ちゃんと誇りってもんはある。少なくともあんたらに飼われたりなんかしない。ボロボロになろうが、僕はちゃんとカラスを狩ってたまに食べてる。たった一匹でも、僕はやっていける。少しでも同情するなら、食事を頂戴。
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