666文字百物語
124、望みどおりになるとは限らない Pixivでは「462」
スポーツの才能って、要は遺伝だと思う。
運動神経のいい両親からは、同じく運動神経に恵まれた子供が生まれる。だから、動物の交配と同じように、同じスポーツ選手同士で結婚したりするんだ。そしてその子供が、サラブレッドとして将来を期待されている。
……ずるい、って思う。
幸いわたしは運動神経はいい方だ。けど、親友の運動能力は平均よりかなり下で、体育の授業を嫌がっている。それでもそんな事情なんて聞いてくれないのが学校という場所であり、跳び箱の授業では、彼女は小学生でも飛べる高さでも苦戦していた。100メートル走ではタイムは12秒台。それをいつも体育教師は不機嫌になって、怒る。彼女のせいじゃないのに。
いつもは耐えている彼女でも、いい加減に腹に据えかねたらしく、突然ブチ切れた。
「じゃあ、先生はどんな事でも出来るんですよね? だってわたしにいつも無理難題を押し付けるんだから! 先生自身が出来なきゃおかしいですよね?」
ブチ切れているせいか、彼女には迫力があった。
「運動神経がいいんですよね? なら屋上から飛び降りてくださいよ。運動が得意なら平気でしょう?」
その勢いは、どこかおかしかった。教師はプライドがあって、謝りもしなければいうことも聞かない。でも彼女はらしくもなく、力づくで三階にある体育館の窓を破って、体育教師をを突き落とした。
教師は、打ち所が悪かったらしい。
「……え? わたし、そんなことしたの?」
一時間後、様子がおかしかったと彼女に伝えた時、返ってきたのはそんな返事。きょとんとして、本当に知らないらしい。
「そういえば、運動が出来るようになりたいって、お稲荷様にお願いしたんだけど、それかな?」
深く考えたくないので、わたしはその仮説を支持した。あの時はこの子はきっと、憑りつかれてたんだ。そうに違いない。
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