666文字百物語

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  115、女子中学生の悩み Pixivでは「331」  

 あ、まただ。
 この時期になると、鏡をのぞくのが苦痛になる。部活で汗をかくし、その部活の時間も早いから、食事もいつも簡単に済ませてる。
 その結果が、鏡の中の自分自身の顔。
「……ひどいニキビ」
 小学生まではなんともなくて、むしろきれいな肌だと褒められていた、わたしの真っ白だった肌。それが今ではすっかり日に焼けて真っ黒になり、ひどいニキビに悩まされている。このニキビ、ひとつ治ったと思ったら、すぐに倍になって出来上がってくる憎らしいもの。わたしの天敵だ。逆効果、いけないとはわかっていても、人差し指で潰さずにはいられない。それだけ目障りだ。
「今日はちゃんと気を遣ってみたわ。ビタミン剤はBとCだけでいいの?」
「雑誌に書いてあったから。ご飯はいらないよ。太るのやだし」
 部活で運動してるけど、ダイエットもしてるんだ。目標は45キロをきること。中学生にもなれば身だしなみ、見た目に気を遣うのは今時普通でしょ? だからご飯の代わりにビタミン剤を流し込む。


「……いいなぁ。僕もあんなにたくさん食べてみたい」
「残飯が出るなんて、なんて贅沢な。俺たちは食糧難でも必死に戦ったってのに……」
 戦時中、食糧難に苦しんだ霊たちは、自分の埋まっている場所の上で暮らす家族に呪いをかける。下級霊である彼らに出来るのはただのニキビ程度の嫌がらせに過ぎないが、それが相手にとって最も効果的であることを本人は知らない。
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