666文字百物語

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  111、とってもかわいいわたしの妹 Pixivでは「286」  

 わたしには、妹がいます。それはもう、愛らしくて、とてもかわいいい子なの。いつも笑顔でいて、その表情は変わることがないの。わたしにとって悲しいことがあった時も、大好きな妹のその変わらない笑顔を見ると癒される。みんなを癒すような、天使の笑み。それはこの妹のためにあるような言葉だわ。
 そんな妹がわたしの自慢で、わたしはいつも、どこにでも妹を連れていくの。その小さな手を握って、はぐれないように細心の注意を払ってね。わたしのかわいい妹を見た人はみんな言うの。
「そんなかわいい妹がいていいね」って。
 そこの言葉を聞くたびにわたしは得意になる。そうよ、わたしの妹よりもかわいい子なんて、どこにもいないの。わたしはずっと妹と一緒にいるの。だから、他の子のように彼氏なんかほしくないの。ずっとこの子と一緒にいるの。一生一緒よ。


「それで先生、この子が治る見込みはあるのでしょうか?」
「それは、難しいですね。子供の頃が幸せすぎたんでしょう。完全に子供の頃に意識が戻ってますね。……ところでこの人形は?」
「実は、この子の後にもうひとり生まれるはずだったんですが、流産してしまって……。ずっと楽しみにしていたので、代わりに、と」
「だからずっと離さないんですね。まぁ、幸せな記憶の中でずっと生きるという選択もあるにはあるでしょうが――」
 チューブが繋がれたその女性は、ずっと変わらない笑顔のままで何年もベッドに横になっている。その笑顔は彼女が抱える人形とそっくりだった。
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