666文字百物語
109、…くだらない Pixivでは「417」
幽霊が鏡に映る、写真に写る。ただそれだけで夏場にはホラー特集だなんだって、大げさに取り上げる。……なんとくだらないことか。写真に幽霊が写るくらいで何がこわい? ただのピンボケだろ? あぁ、本当にくだらない。
「……黙り込んじゃってどうしたの? いつもあなたがバカにしてる『くだらない』ホラー映画くらいでさ」
俺の彼女はこういうくだらない心霊現象とやらが大好きで、この手の映画はデートの定番になりつつある。まったくもってくだらない。くだらないとしか言いようがない。こんなもの、ただ大げさに、わざとらしく霊とやらの存在を強調しただけの、子供向けじゃないか。
「子供は見ちゃダメってレーディングなのよ。だから連れてこなかったじゃないの。あの子たちはあなたに会いたがってたわよ」
彼女はわざとらしく残念そうな顔を作った。
たしかに今でこそ、『彼女』と『彼氏』と言われるような関係ではあるが、昔は夫婦だった。彼女と離婚した原因は、原因は……なんだっけ?
「あなたって忘れっぽいからね。それにほとんどのことを『くだらない』の一言で済ますし」
そうか? くだらないものをくだらないと言ってなにが悪いんだ?
「でも、実際に眼にしたならくだらないなんて言えないわよね? 覚えてないでしょ? あたしたちが離婚した原因」
覚えていないが、たぶんくだらない理由なんだろう。
「……生まれていればもう小学生にはなっていたのに。あなたがあたしのお腹を蹴るから、いなくなっちゃったじゃないの」
そういう彼女の背後には、エコー写真に写っているような胎児のシルエットが浮かんで見えた。
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