666文字百物語

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  108、最強を目指して Pixivでは「414」  

 最強って、どんなことを言うんだろう?
 僕は、いや俺は、子供の頃から父さ……親父に言われ続けてきた。
「男なら最強を目指せ」
 その最強というのは、何をもって最強というのだろうか。ある部門で一番強かったとしても、他で負けていたら、それはもはや最強ではない。最強という称号というのはそう簡単に手に入らないモノ。だからこそ逆に燃えるのだ。
 そしてその最強を俺は見た。
 授業で空手をやった時、圧倒的な強さを見せつけたやつがいた。一番強い、それこそが最強。俺は彼に最強になるにはどうすればいいか尋ねた。
「……さいきょう? おまえ今時そんなの目指してんのか? 夢があっていいな」
「頼む! 強くなる方法が知りたいんだ!」
「いや、やみくもに動いてても効率が悪い。とりあえず、どんな風になりたいんだ?」
 そう返ってくるとは思わなかった。しばらく考えて、俺は答えを出した。
「どんなに殴られても平気な、頑丈な身体かな?」
 何事も身体が資本。彼はそんな俺を笑ったようだった。
「おまえさ、単純って言われるだろ? 最強を目指せとか親父辺りに言われたんだろ、どうせ。そのくらいはどうにかなるぜ」
 どういう意味だろうか。最強というのはそんなに簡単に手に入るものなのか?
「だってさ、おまえ、もう死んでるからな? おおかた、親父さんに折檻でもされたんだろ。あれだよ、有名な野球漫画の親父みたいに無茶なギブス嵌められてさ」
「は?」
「死者はもう死んでるんだからさ、もうそれで最強ってことでいんじゃね? つーか死んでまで面倒なことに巻き込まれたくねーよ!」
 どうやら最強とやらは、俺が考えている以上に深いものらしい。というか、俺ってもう死んでたのか。
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