モノクロガールズカレイドスコープ ⚙ サイドストーリー

エピソード:80

 私は伊角、女子中学生だ。
 現在友達と勉強中。学校の図書室で数学の一次方程式を教えてもらっている。
「それで同類項を――」
 私の向かいに座る子がその友達。
 いつも教室にいる時は暗い顔で落ち着かない様子で周りの様子を伺ってるタイプの子だ。でも今は教室にいる時と全然違って普通に喋っている。というより説明している。
 三島ミサキ。
 初めて教室で顔を見たときから冴えない子だと思っていた。「大人しい」というより「暗い」。そんなマイナスな印象の子だった。
「こうすると楽で早く解けて――」
 だから一緒にいても苛立つことはないだろうと思っていたのに。
「……」
 なんでだろ。
 一緒に勉強してるとなんだかイラついてくるというか、鼻につくというのか、モヤモヤする。自分より下と思っていた相手が自分より結果を出しているのを見たときに感じる、違うって感じ。私は聞いてない、裏切られたとすら思う感じ。これだ。
 私はミサキの事を地味で暗い陰キャだと思ったから近づいたのに。ひとつでも自分より上なことがあるなら最初から声なんかかけなかったのに。全部自分よりできない相手ならこんな気持ちにならずに済んだのに。
 ミサキにさえ勉強で勝てないとか……私、そんなにやばかったの?
 そんな風に思えて辛い。あなたはそんな子じゃなかったじゃない。あなたはいつも私より下にいて、私に自信を持たせてくれる存在でいてくれなきゃ困るんだよ。
 明らかに私より下だから友達になったのに、やめてよ。
「?」
 ミサキは驚いた顔で私を見ている。
 私が一次方程式がわからないことがわからない。そう言いたげに。
 ……ああ、もう。イライラする。
 他の誰かならともかく、あんたにだけはそんな顔されたくない。ほんと腹が立つ。
「ミサキはいいよね……わかる側で」
 きっとテストの点が悪くて叱られたり、勉強しなさいって言われたこともないんだろうな。羨ましい。
「!」
 ミサキは驚いている。
 親も頭がよくて優しくてしっかりしてて……そんな有能な親だからミサキもコミュ障のくせして勉強はできる側なんだ。一度ミサキの家に行ったことがあるけど、一目でわかるくらい賢そうな雰囲気のあるお母さんだった。学生時代に委員長か生徒会長やってそうな感じ。少し怖そうな雰囲気はあったけど。それでも私から見ればいい親だ。
 私の親なんて両親ともに平凡が服着て歩いてるような人たちだから。普通で常識人で特別な何かは一切ない、どこにでもいる普通の親。だから私も没個性で、目立つような凄い特技などひとつもない。周りからはきっとどこにでもいる普通の子だと思われてる。
 ミサキみたいに一目でわかるような、そんなすごさを感じる親がよかったのに。私は生まれたときから普通で没個性でどこにでもいる普通の子Aでしかない。
「親もいい親なんでしょ? ミサキはいいなぁ」
 ほんとうに、ミサキはずるい。
「……」
 なぜか傷ついたような顔をしてるけど、今まで優しい親に大事にされすぎてるからきついことを言われたことがないんだろう。もしかしてこういうこと言われるのってミサキは初めてなのかもしれない。
 でも私は別にひどいことを言ったとは思わない。ミサキはいいところに生まれたんだろうから、少しくらい言ってもいいじゃない。恵まれてる人が妬まれるのは当たり前じゃない。
 私は悪くないよね。
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