モノクロガールズカレイドスコープ ⚙ サイドストーリー
エピソード:74
立花が出て行って、それを希幸が追って、更にそれを追って三島さんが出て行った。
その後わりとすぐにチョコもふらりと出て行った。
「今日はやけに慌ただしいことですね」
「そうですね」
チョコがふらりとどこかへ行ってしまうのは慣れたものだからあまり気にしない。……気になるのはむしろこの状況の方だ。
残されたのは私と美妃さん。
「……置いていかれてしまいましたね」
美妃さんはふわりと微笑む。
「ですね」
つられて私も自然と口角が上がる。
幼い頃からあまり友達の多くない私でも自然体でいられる数少ない相手、貴重なそのひとりが美妃さんだった。美妃さんはさすが生徒会長というだけあってどんな相手でも話しかけられる人。良家の子女ゆえに一見控えめでお淑やかな雰囲気があるけれど、必要な時には自ら行動を起こせる人だ。私も最初は徹底して受け身の人だと思っていたから意外と大胆なところもある彼女に驚くこともある。
そんな美妃さんは当然コミュニケーション力も高い上に人間関係もかなり広いらしい。だからか、私のような性格の相手にも当然のように接してくれる。人付き合いが苦手な私にとってはとてもありがたい。最近では三島さんともたまに話すようになった。三島さんには自分とどこか共通するものを感じる。失礼かもしれないけど、どこか欠落したものを彼女から感じるのだ。
「たまには雪子さんと2人きりというのもいいものですしね」
「……」
美妃さんが私に笑いかけてくれて考え事をやめた。
「どうです? 2年生は」
「去年経験済みですから。勉強に関してはズルをしている気分になります」
「いえ……そうではなく」
「?」
てっきり留年ゆえの勉強悩みについて聞かれたのかと思ったが違った。
「去年後輩だった方々と共に勉強するのは……どうか、と」
美妃さんの言葉でようやく、何が気になっての質問だったのかわかった。
「わたくしから見た雪子さんは非常に繊細な方だと思えるので。学業で困ることはなくとも、交友関係でお困りの点はありませんか?」
「……いえ思ったよりみんな親切ですから。ヘンな気遣いもされないし……」
私としては年齢が上だからと妙に気回しされる方が嫌だった。
特に立花とは放課後の生徒会活動に支障が出かねないから、教室で悪目立ちもしたくない。だから特別扱いもなく、同じ学年のクラスメイトとして気兼ねなく接してくれる彼女たちには心底感謝している。
「問題ありません」
「そうですか」
ホッとした表情で美妃さんはまた微笑む。
「それはよかった」
「……」
美妃さんの優しい微笑みを見ていると本当に大丈夫なんだと安心する。
何事もなかったように静かに紅茶を飲む彼女を眺めているだけで、私も穏やかな気分になれる。今年の一年生、希幸と三島さんが入ってくる前はこんな時間が当たり前にあったっけ。
今年の生徒会活動が始まる前は、美妃さんと役職は違うものの生徒会役員だった立花、チョコ。そして私と去年の三年生。立花は真面目に仕事をしているけれど運動部の助っ人に引っ張られてあまり顔を出さなかったし、チョコはなぜか美妃さんと2人きりになるのを避けていたふしがあり、彼女もまたふらりとどこかへ出ていた。自然と私と美妃さんの2人きりで生徒会室にいる時間が長かった。私にとっては嬉しいことだったけど。
その後、立花の推薦で希幸が書記として生徒会に入り、知らないうちにチョコが三島さんを生徒会に引きずり込んでいた。
「ところで」
私の回想のキリの良いところで美妃さんが別の話題を振って来た。
「あれからいかがです?」
「?」
なんだろう。何の話だろうか。
反射的に首を傾げた私に美妃さんは言った。
「あなたの願いごとです、雪子さん」
「!?」
願いごとというのはほぼ間違いなく、例のなんでも願いを叶えてくれるという話のことだろう。
「あなたの願いは叶いましたか?」
「……」
私はどう言ったものか、迷ったものの、正直な気持ちを口に出す。
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