モノクロガールズカレイドスコープ ⚙ サイドストーリー
エピソード:71
「始まった……」
無意識にわたしは呟いていた。
どこかで廻る、無数の歯車の音。聞き慣れたそれが今はやけに耳に障って仕方がない。
「ううん。始まりじゃないわ」
声が聞こえた気がした。
「!?」
反射的に振り返ったけれど、そこには誰もいなかった。いつものように。
「……」
なのに何か、たしかな「なにか」を感じたのは気のせいじゃない。
「終わるのよ」
「!?」
それはずっと、ずっとずっとずーっと、わたしがもう一度聞きたかった声だった。
ずっと再び聞きたかったあの声だった。
「ねぇ、――」
思わず問いかけても、広がるのは、見えるのは、感じるのは、ただひたすらの暗い闇。
「……」
気のせいじゃない。
そう確信していても、会えないことはわかっている。
だいたい、どんな顔をして会えばいいのだろう。最初になんと言えばいいのだろう。
「ごめんなさい」「ありがとう」「会いたかった」「待ちわびた」、それとも。
今度こそもっと早くに気持ちを伝えるのが先なのだろうか。
「……終わり」
これはきっと終わりの始まり。
長らく続いた「なにか」が終わるきざし。
でもなにが?
なにが終わるのだろうか?
「……」
歯車は廻る。
わたしだけを取り残して、あれからずっと廻り続けている。
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