モノクロガールズカレイドスコープ ⚙ サイドストーリー

サイドストーリー52

 あの子は、雪子はどうしてああなんだろう。
 私は自分の娘ながら雪子がよくわからない。いつも俯いて、すまなそうに私を見る。私は雪子のことを大事な娘だと思っているし、愛しているし、どんな雪子でも愛おしい、かけがえのない大事な我が子であることには変わらないとずっと思っているのに。
 なんで雪子はあんなに泣きそうな顔をしているのだろう。何も悪いことをしていないのだから堂々としていればいいのに。もっと笑顔を見せて欲しいのに。雪子はずっと浮かない顔ばかりしている。
 学校であったことを聞いても、しゅんとしてポツポツ話し出す程度だ。楽しいこともあるだろうに、自分から積極的に人と関わるのが苦手らしい。そしてそんな自分のことをずっと好きになれずにいるようだ。本人がはっきりそう言ったわけではないけれど私だって母親だ。このくらい本人が言わなくてもわかる。
 どうして? 雪子はそこにいてくれるだけでいいのに。
 生きていてくれるだけでいい。仮に勉強も運動もできない子だったとしても、私の雪子への愛情は変わらない。どんな我が子でも私たちにとってはかけがえのない大事な我が子なのだから。
 
 学校での先生との面談でも、厳しいことを言われるかもしれないと覚悟はしていた。たしかになかなか耳に痛いことは言われたけれど、思っていた感じではなかった。低学年の頃の担任の先生は雪子をちょっと困った子のように言っていたけれど今の担任の先生は違った。雪子の気性を理解した上でちゃんと心配してくれている。そこで本音のようなことも出てきたけれど、この先生が本当に子供想いの人なのだというのはわかる。そして世の中には私が思っていた以上に問題のある親が多いということも。
 我が家はそんなことはない。
 家族仲は良好だし、浩も雪子をちゃんと守って可愛がっている。夫だって休日には子どもたちと遊んだり他愛ない会話をしてちゃんと子どものことを見ている。
 問題はない。
 問題があるとすれば、きっとそれは雪子自身が自分のことを好きになれずにいることじゃないだろうか。
 どれだけ私たち家族や周りの大人が雪子のために何かしようとも肝心の雪子本人が自分のことを肯定できずにいるのなら、それは私たちにはどうにもできない。雪子自身が自分を好きになれなければ解決しないのだろう。
 だからせめて、私はちゃんと雪子のことが大好きだと伝える。どんな雪子でも私たちは愛していると言葉と行動で示す。
 あなたは決して卑下するような存在ではないし、私たちにはあなたが必要だとしっかり伝える。
 私にはこれしかできないから。
 今日も私は雪子の好きなお菓子をお土産に買って家路を急いだ。
Copyright 2024 rizu_souya All rights reserved.

-Powered by 小説HTMLの小人さん-