モノクロガールズカレイドスコープ ⚙ サイドストーリー

エピソード32

『三島ミサキさん』

 思わずあたしは顔を上げた。
 もうアイツなんか知らない。どうなろうが知ったことじゃない。そう思っていたのに。
 なのに無意識のうちに反応していた。誰の声だろうと耳を澄ませる。
 アイツが散々あたしのことを拒絶するし、じゃあ勝手にすればってことで引っ込んだ。けどやろうと思えばまた浮上できる。しないけど。
 そう決めてずっと無視しようと思ったわけだが、唯一この声だけにはあたしも引きずられてしまう。
 意識を向けてみる。
 その先に三つ編み四本とリボンの人がいた。おそらく先輩なのだろう、初めて見た相手だった。
 どこか浮世離れというか、独特の雰囲気のある人。あの先輩相手とはまた別の感じがする。あたしの中で音が響く。
 どうやら前から『ミサキ』のことは知っていたようだ。口ぶりからして生徒会の誰かに話を聞いていたのだろう。自分の知らないところで話をされるのは少し抵抗があるが、特に敵意も害意も感じない。
 アイツは初対面から無自覚の拒絶感情を持ったようだけど、あたしはそうでもない。慣れっこじゃないか。何をいまさら。
 ただ、やはり最初の印象は間違っていないと思った。
 直接話したことがないのに、見透かしたようなことを言う。しかもそれはアイツには自覚はないだろうけどあたしには思い当たるふしがある。認めたくないけど、第三者から見れば明白なほどに。
 アイツは鈍いから全く別の人物を思い浮かべたようだけど。

「ま、いっか」

 ここまで考えて、あたしは急にどうでもよくなってきた。
 アイツはあたしのことなんていらないんだろうし。ならあたしだって、アイツがどうなろうが知ったことじゃない。お互い憎み合ってるんだから。別にどうなろうが知らない。
 厄介者は素直に大人しくしてやるさ。
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